薄層クロマトグラフ(TLC)法について
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 薄層クロマトグラフ法は、適当な固定相で作られた薄層を用い、混合物を移動相で展開させてそれぞれの成分に分離する方法であり、物質の確認又は純度の試験などに用いる。

(薄層板の調製)

通例、次の方法による。
 50 mm x 200 mm又は200 mm x 200 mmの平滑で均一な厚さのガラス板を用い、その片面に、医薬品各条に規定する固定相固体の粉末を水で懸濁した液を適当な器具を用いて0.2~0.3 mmの均一の厚さに塗布する。風乾後、105~120°の間の一定温度で30~60分間加熱、乾燥して調製し、薄層板とする。ガラス板の代わりに適当なプラスチック板を使うことができる。薄層板は湿気を避けて保存する。

(操作法)

別に規定するもののほか、次の方法による。
 薄層板の下端から約20 mmの高さの位置を原線とし、左右両側から少なくとも10 mm離し、原線上に医薬品各条に規定する量の試料溶液又は標準溶液を、マイクロピペットなどを用いて約10 mm以上の適当な間隔で直径2~6 mmの円形状にスポットし、風乾する。次に別に規定するもののほか、あらかじめ展開用容器の内壁に沿ってろ紙を巻き、ろ紙を展開溶媒で潤し、更に展開溶媒を約10 mmの深さに入れ、展開用容器を密閉し、常温で約1時間放置し、これに先の薄層板を器壁 に触れないように入れ、容器を密閉し、常温で展開を行う。
展開溶媒の先端が原線から医薬品各条に規定する距離まで上昇したとき、薄層板を取り出し、直ちに溶媒の先端の位置に印を付け、風乾した後、医薬品各条に規定する方法によって、それぞれのスポットの位置及び色などを調べる。Rfは次の式によって求める。
以上の薄層クロマトグラフ法は日本薬局方の一般試験法に記載されているものである。生薬の確認又は純度試験には、固定相粉末としてシリカゲル又は蛍光剤入りシリカゲルを用いて調製した薄層板を用いる。現在では市販の薄層板(ガラス又はプラスチック板)が広く用いられる。薄層板に分離したスポットは各々の化学的(呈色試薬の噴霧など)または物理化学的性質(紫外線照射など)を利用して検出する。検出におけるスポットの性状およびRf値から各成分の確認を行う。 薄層クロマトグラフ法の特徴は簡易性、迅速性と分離能が優れていることであり、操作も非常に簡単なため、広く利用される。また、スポットの検出には各種の呈色試薬が使え、ガラス板の薄層を用いれば200°以上の高温に加熱し呈色させることもできる。局方では確認試験と純度試験にのみ用いられているが、定量にも利用できる。欠点としては、ろ紙クロマトグラフ法に比してRf値の再現性が劣ることが挙げられる。そのため標準物質と常に比較する必要がある。これはシリカゲルの活性化の度合いが各薄層板ごとに異なり、また同じ薄層板でも時間の経過とともに吸湿により活性が低下するからである。