これは基本的には医薬品各条に記載する生薬を対象として生薬の定義を行ったものであるが、局外生薬も視野に入れた全般的な範囲を示したものと考えてよい。「動物の薬用とする部分」は局方生薬ではゴオウ、センソ、ユウタンなどに該当する。局外生薬としてはジャコウ、サイカクなどがこれに当たるが、いずれも希少動植物保護の観点からワシントン条約の規制種となり、入手は困難となった。局方生薬であるユウタンの基原は現在は同条約の規制種ではないが、いずれ局方からはずされることは必至である。「植物の薬用とする部分」はいわゆる生薬の大半に相当するものであり、高等植物では根、根茎、葉、花、木部、果実など各部位が利用されるほか、一部の下等植物もある。「細胞内容物」とは植物細胞内に蓄積される一次及び二次代謝物であり、でんぷん類、精油、油脂、ろうがこれに当たる。「抽出物」は基原より抽出過程を経たものであり、アロエなどがある。生薬総則第1条に収載する品目は「生薬総則及び生薬試験法を適用する」ということで狭義の生薬として指定されたものと考えることができる。一方、精油、油脂、エキス類などは生薬総則、生薬試験法を必ずしも全般的に適用するわけではなく、他の医薬品と同様に薬局方通則、一般試験方を受けるので、これらは広義の生薬と考えることができる。第十四改正版まではコメデンプン・コムギデンプン・トウモロコシデンプン・バレイショデンプンが生薬総則の適用生薬とされ、コメデンプンは第十五改正まで残っていたが、第十六改正から適用外となった(但し、いずれも医薬品各条には収載されている)。アへン末もいわゆる生薬と考えられるものであるが、麻薬として扱われるのでこの生薬総則の適用外となっている。