カヴァ(コショウ科)
Piper methysticum (Piperaceae)

kava

→戻る(2009.10.2;日本新薬山科薬用植物園)

【解説】 太平洋諸島原産の雌雄同株の灌木。葉は先の尖った心形、全縁で互生する。葉柄は葉身に比べると短めで掌状の葉脈が鮮明である。長い穂状花序をつけ、雄花序は多くのコショウ(Piper)属のように下垂せずに上向きにつける。ただし雌花序はごくまれで、人工的に受粉させても結実しない。したがって有性生殖は困難で、挿木で栄養繁殖を繰り返してきた歴史がある。根の乾燥粉末を水で練ったもの、あるいは根から水で揉み出したエキスを原産地では嗜好品としてあるいは宗教社会的儀式で用いられた。今日では鎮静作用を目的としたサプリメントが製造され、ドラッグストアなどで販売されている。しかし、重篤な肝臓障害を含む健康被害が報告されているとして、2002年以降、厚生労働省は販売監視強化の通達を出している。そのほか、バルビツレートやベンゾジアゼピンなどの薬物との協力作用により、薬物の作用(鎮静作用)を強めることが報告されている。成分としてはカヴァインを始めとするカヴァラクトンを多く含む。kavaカヴァという名はトンガほかポリネシア語で「辛い」という意である。属名は古代ギリシア語の“πέπερι” (péperi)に由来する。『薬物誌』にPIPER(コショウPiper nigrumとあるが、ディオスコリデスは例外的にラテン名を採用し、これがコショウ属を表すラテン名となった。種小名はギリシア語で“酩酊する”の意というが、語義の詳細は不詳。