記述式による植物種の記載の実例
→ホーム

 Platycodon A. DC. キキョウ属  多年生の直立草本で根は太い。葉は互生ごせいし、ときに対生たいせいまたは輪生りんせいする。花は、大形、茎頂に少数個ついて、中心花が先に開く。萼筒がくとう子房しぼう合着がっちゃくし、裂片は5個。花冠かかんは紫碧色、広鐘形こうしょうけいで5裂する。雄ずいは花冠と合着せず、花糸は基部の幅が広い。子房は下位かいにつき、5室で、胚珠はいしゅは多数、柱頭ちゅうとう裂片は5個で、線形せんけい。さくは倒卵形とうらんけいで上向し、上端は円錐形でがく裂片の内方から胞背裂開し、さく片はがく裂片と対生たいせいする。種子はちょう楕円形だえんけいで扁平。
1. Platycodon grandiflorum (Jacq.) A. DC.; Campanula glandiflora Jacq.; Campanula glauca Thunb.; Campanula gentianoides Lam.; P. grandiflorum var. glaucum (Thunb.) Sieb. et Zucc.; P. chinense Lindl. et Paxt.; P. glaucum (Thunb.) Nakai
 キキョウ- 無毛または葉の下面に短毛様の突起をつけ、根は太い。茎は高さ40-100cm、ときに上方が分枝する。葉はきょう卵形らんけいまたはこう卵形らんけいで、えい鋸歯きょしがあり、鋭頭えいとう、基部はこう楔形きっけいまたは鋭形えいけい無柄むへいまたはやや無柄、長さ4-7cm、幅1.5-4cm。花は茎頂けいちょう付近に数個つき、有梗ゆうこうで、直立する。萼歯がくしは長さ0.5-5mm、3角状皮針形ひしんけい花冠かかんは碧色または白色、径4-5cm。さくは上端が5裂し、さく片はやや革質で尖り、種子は長さ約2mm。【大井次三郎「日本植物誌」(1965)】

 赤字は形態分類学でよく用いる語彙で、予備知識がないと具体的な植物のイメージを思い浮かべることは難しい。しかし、正確な形態の記述は可能である。