核磁気共鳴スペクトル(NMR)について(1)

bromoethane_NMR

 NMRがもっとも有効な構造解析法といわれる所以は、プロトン間にスピン-スピン相互作用があって分子構造における水素の相対配置を決定できる点にある。しかし、そのためにはスピン-スピン相互作用をきちんと理解しておく必要がある。もっとも簡単なスピン-スピン系として臭化エチル(CH3CH2Br) のスペクトル(上図)を挙げて説明しよう。まず、始めに図中の2Hとか3Hというのは積分値(そのシグナルのプロトン(=水素)の数を相対値として表わしたもの)を示すものであることに留意する必要がある。まず、2H分のシグナルをA、3H分のシグナルをBと仮に呼ぶこととする。
(ポイント1)

  1. CH3の3つの水素が等価(化学シフト値が同じ)である→この3つの水素は一つのシグナルとしてスペクトル上に現れる。
  2. CHの2つの水素が等価である→この2つの水素は一つのシグナルとしてスペクトル上に現れる。
  3. CH3とCHの水素は不等価(化学シフト値が異なる)である→スペクトル上ではそれぞれ別の場所に現れる。

水素の等価性、不等価性を論じる場合、シグナルが3本、4本に分裂していることは関係がないので、それを抜きにして考えなければならない。

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