【解説】 東南アジア~インド原産とされる大型一年草で、草丈は2m以上、茎径3cmに達する。葉は長い葉柄があって互生し、つけ根に筒状の托葉があり茎を抱く。葉身は長さ10〜25cm、幅5〜15cmの卵形ないし広卵形、先は尖り、基部は円形または心形、縁は全縁、両面に短毛が密生し、名の由来はそれによる。側脈は10〜20対、葉の裏側に腺点がある。花期は7月~10月で、花茎を長く伸ばして分枝し、その先に多くの小さなピンク色の花を密につけて穂状花序を形成して下垂する(→花の拡大画像)。花冠のように見えるのは萼片で5枚あり、雄しべは7本、雌しべは円形の子房と2裂した花柱からなる。熟すと痩果をつけ、種子は扁平で黒く、やや光沢がある。観賞用として栽培されていたものが逸出し、現在では荒れ地、路傍などに生える。民間で薬用とされ、化膿性の腫物などに用いられた。本種の文献上の初見は『訓蒙圖彙』(中村惕斎、1666年)であり、図絵とともに「葒は蓋ふごとく毛あり」(巻之二十「花草」)とある。『成形圖説』(曽槃ら、1831年)に「大毛蓼 毛蓼に類て大きく茎葉に毛茸多き故に名く」(巻二十五)とあり、図絵には葒艸とある。本草では『名醫別錄』の中品に葒草の名で初見し、『本草和名』は“以奴多天”、また『和名抄』も同音の和訓をつけるが、本種がわが国に伝わったのは江戸時代になってからであるから、今日いうイヌタデより大型のオオイヌタデを指すと考えられる。因みに、名前の紛らわしいケタデPersicaria barbata var. barbataは、別名をリュウキュウイヌタデともいい、南西諸島以南のアジアの亜熱帯、熱帯に分布する別種である。