葉も根もなく茎だけからなる珍しい植物で、シダ植物でもっとも原始的といわれる。茎は育つと上の部分で稜のある細枝を分枝し、その側面から胞子嚢をつけ、成熟すると黄色になる。名の由来は松葉のように細いからだが、“芳しく美しいものの美称”を意味する“蘭”の字を付与するのは、江戸時代後期の文政年間 (1818~29) 以降に園芸植物として流行したからである。いわゆる古典園芸植物の究極の一形というべき存在であり、天保8 (1837)年に専門書である『松蘭譜 』が刊行され、多くのマツバランの品種の彩色図を載せている。