ムベ(アケビ科)
Stauntonia hexaphylla (Lardizabalaceae)

関東地方南部以西の本州、四国、九州と南西諸島の山地や山野に生える常緑のつる性藤本で、国外では朝鮮半島南部、台湾、中国に分布する。葉は柄のある掌状しょうじょう複葉ふくようで、小葉にも長い柄があり、葉身は厚い革質で光沢があり、通例、5枚であるが、若枝では3枚、成熟枝では5〜7枚つくことがある。雌雄同株で雌花・雄花がある。花期は4~5月で、花は葉の脇に総状につき、雌花の方が雄花より大きい。そり返った花弁が6枚あるように見えるが、萼片がくへんであって花弁はない。秋期に5〜7cmの楕円形の果実をつけ、熟すと暗紅紫色になるが、アケビのように裂開することはない。果実はジューシーで甘味があって食べられるが、種子が多いのであまり利用されない。民間で果実を乾燥したもの利尿薬とするほか、茎および根は強心利尿薬とするという。中国では果実や種子を駆虫薬とする。わが国では漢名を郁子イクシを充てるが、「和名抄わみょうしょう」に「郁子 和名牟倍むべ」、「本草ほんぞう和名わみょう」に「郁核 和名宇倍うべ」とあることに基づく。しかし、本草学の記述を精査すると、郁核イクカク郁季仁イクリニン)の正しい基原はバラ科ニワウメPrunus japonicaまたはユスラウメP. tomentosaであり(詳細は拙著「和漢古典植物名精解」第12章「1-2」を参照)、ムベの漢名は明・周憲王著「救荒きゅうこう本草ほんぞう」巻十に収録される野木瓜ヤモッカとするのが妥当である。

mube

→戻る(花:2013.5.17;香川県小豆郡小豆島町;実(栽培品):2004.9.12 八王子市南大沢)