本州の三重県と奈良県、四国の一部の山野の林床に生える多年草で日本固有種。葉は3〜5枚の小葉からなる鳥足状ないし掌状の複葉で、長い葉柄があり、茎に対生状につく。小葉の葉柄は短く楕円形で先は尖って基部はくさび形、縁は、通例、全縁であるが、この画像の個体のように不規則な鋸歯があるものもある。花期は4〜5月ころ、2つの葉の基部から肉穂花序が直立し、付属体は白色の棒状で上部がボール状に膨らみ、それを包む仏炎苞は白い口辺部を除いて紫褐色であり、舷部はほぼ直立して先は尾状に伸びる(多くのテンナンショウ属植物では前のめりに反る)。グロテスクな花序が圧倒的に多いテンナンショウ属の中でユキモチソウは一際目立ち、江戸中期の園芸家の目に留まったようで、伊藤伊兵衛政武著「増補地錦抄」(1710年)に“雪もち草”の名を見る。和名は雪のように白くて柔らかな付属体の先をつきたての餅に見立てたようである。