亜熱帯の島西表島の天然記念物
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 わが国最南端の南西諸島西表島は真冬でも平均気温は18度以上あり、東京で言えば5月頃の陽気に相当する。また、一年中を通して雨量に恵まれるので、鬱蒼とした森林が発達している。植生学的には本土のヤブツバキクラスと同等の照葉樹林であるにもかかわらず、熱帯系植物が多く生育しているので熱帯雨林かと錯覚するほどである(→亜熱帯の森でも見られる熱帯植物の驚異)。この豊かな森には多くの特産の生物が生息し、本ページでは天然記念物に指定されているものを紹介する。

特別天然記念物


Spilornis cheela
 ワシタカ目タカ科に属し、和名をカンムリワシと称する。ワシの仲間というと大型の鳥を想像するが、カンムリワシはカラスぐらいの大きさでワシの仲間としては小型である。しかし、鋭い眼光とくちばしは猛禽類であることを十分に彷彿させる。日本では八重山諸島だけに分布するが、西表島以外では見かけることは少ない。星立から白浜の間の水田地帯で電信柱の上に留まっているのをしばしば見かける。水田地帯にはカエルやヘビなどの餌が豊富だからと思われる。つまり、原生林中ではなく、意外にも人里で多く見かけるのである。

Cuora flavomarginata evelynae
 カメ目ヌマガメ科に属し、和名をセマルハコガメと称する。八重山諸島の石垣島、西表島および台湾、中国に分布する陸ガメである。マングローブ湿地、沼、山地の川や沢の周辺でよく見られる。時折、この写真のように道路上をのこのこ出てくることもある。西表島の周遊道路は基本的には低地湿地を切り開いて建設されたものなので、このようなことが起きる。交通事故の犠牲になる個体も珍しくない。外敵に襲われると、甲羅の腹側 が折れ曲がり、完全に蓋を閉じて体を防備する特徴がある。

天然記念物ではない珍しい生物


Idea leuconoe
 鱗翅目マダラチョウ科に属し、和名をオオゴマダラと称する。沖縄本島を北限とする日本最大のチョウであり、ひらひらとゆっくり飛び、また一旦留まると近づいてもなかなか飛び立たないので写真を撮りやすい。チョウといえばある特定の植物種を食べることで知られるが、オオゴマダラはキョウチクトウ科ホウライカガミParsonsia alboflavescensを食草とする。この植物は強心配糖体という有毒成分を含むので、鳥がオオゴマダラを取って食べないのはそのためだという。サナギは黄金色をしており、それから生まれるオオゴマダラを沖縄では幸運を招く大変縁起の良いチョウと信じられている。

Pteropus dasymallus yayeyamae
哺乳類翼手目オオコウモリ科に属し、八重山諸島に分布する。胴体は茶色でコウモリにしては大型(カラスぐらいか)であるが、オオコウモリ類の中では中型である。母種はクビワオオコウモリで、5亜種に分類され、ヤエヤマオオコウモリは八重山諸島の固有亜種である。コウモリは洞窟に生息するという固定観念が強いが、本種は昼間はこのように木の枝にぶら下がって休息しており、昼までも活動することがある。人をあまり恐れないようで、人里にもよく出没する。植物の果実(フクギ、テリハボク、イヌビワ類など)や花の蜜(花期のデイゴによく出没する)などを食べる。