熱帯の珍しい果実ドリアン
→ホーム2004.4.24 update

 生物多様性が豊かといわれる熱帯地方ですが、有用植物も温帯地域には見られないものが多くあります。ここでは熱帯、亜熱帯産の有用植物について独断的な評論を加えつつ紹介いたします。画像をクリックしますと拡大画像になります。

ドリアンは本当においしいのか?

 熱帯産の珍奇果物といえばドリアンの右に並ぶものはないでしょう。ドリアンはパンヤ(キワタ)科の常緑高木Durio zibethinusの果実で、マレーフィリピンパサイ市にて半島からボルネオ島原産といわれ、現在では東南アジアの純熱帯雨林地帯、すなわち北緯南緯10度以内の高温湿潤地帯で栽培されています。写真はフィリピンマニラ首都圏パサイ市のパブリックマーケットで売っていたもの(写真右の中央)で、フィリピンではミンダナオ島だけが栽培適地のようです。一般にドリアンには強烈な不快な匂いがあるといわれています。マニラ市内のホテルの大半はドリアンの持ち込みを許可していませんが、本当にそれほど不快な匂いなのでしょうか。欧米人には確かに耐え難い匂いのようですが、日本人には我慢できないというほどのものではないと思います。匂いというのはそれぞれの民族の文化的背景によって大きな差があるようで、例えば、日本人が好むマツタケの匂いは大半の欧米人には不快感をあえることでわかるように、ドリアンの匂いも欧米人の好みに合わないだけと思われます。一方で、その匂いさえ我慢すれば風味はすばらしいとドリアンの中身賞賛され、熱帯果実の王様ともいわれています。大人の頭ほどの果実の表面は刺(固いがあまり鋭くないので触っても痛くない)で覆われ、何とも奇怪な雰囲気をもつこの果実が本当にそれだけの価値があるのか実際に食べてみました。大きな果実なのに果皮が厚く、食べられる部分はあまりありません(写真左)が、果物を食べているというより脂身の多い柔らかい肉を食べているような感じがしました。ドリアンを熱帯果実の王様と絶賛するのはおそらく肉食民族(欧米人など)だけではないかと思います。草食民族の私には正直なところおいしいとは感じませんでした。熱帯果実の多くに見られるような独特のくせがあり、少なくとも毎日食べて飽きないというものではない気がします。最近では、東京の果物専門店でも手に入るようになりましたが、もし贈答用にと考えておられる方がいたなら絶対にやめた方がよいと断言します。パサイのマーケット実際、フィリピンのマーケットでドリアンに関心を示すのは外国人ばかりで、現地人にはあまり人気がないようです。マーケットでも最大の面積を占めるのはオレンジ(ポンカン)、リンゴ(FUJIという名札がついていましたが、日本産の富士を現地で栽培したものか?)、ストロベリーなど温帯産の果物でした(写真右)。特にリンゴは子供たちに人気があり、ドリアンには見向きもしませんでした。野菜も人参、キャベツ、白菜など温帯系が主で、少なくともマニラのような大都会では熱帯産は影が薄くなりつつあるようです。熱帯なのに温帯系野菜、果実が栽培できるのかとも思われる方も多いかと思いますが、1000メートル以上の高地では熱帯でも涼しく温帯の植物が栽培できるのです。ルソン島中部のバギオは標高1500メートルで朝晩はジャケットが必要なほど冷え込みます。フィリピンではバギオ周辺で温帯性の野菜、果実が栽培され、大都市向けに出荷されています。まだ見たことはありませんが、ゴボウもマニラ在住の日本人向けにバギオで栽培されているそうです。フィリピンだけでなく、インドネシアなど東南アジアの都市部では同じ傾向で熱帯独特の果実、野菜などは次第に姿を消しつつあるようです。