フクジュソウ(キンポウゲ科)
Adonis ramosa (Ranunculaceae)

fukujusou

→戻る(2001.3.19;帝京大学薬用植物園)

【解説】 本邦各地の山地のやや明るい林内に生える多年草。最近になって国産種はミチノクフクジュソウ、キタミフクジュソウ、シコクフクジュソウが区別されたが、古くからすべての野生種をフクジュソウ1種として園芸用に栽培されてきため、多くの交雑種が発生し、分類を困難にしている。したがってこの画像の個体の系統は不明であることをお断りしておく。属名の由来はギリシア神話上の美少年Adonisアドーニス (“Άδωνις”)で以下の伝説に基づく。美と愛の女神Aphroditeアフロディーテ“Ἀφροδίτη”; ローマ神話ではVenusヴィーナス)に愛され、冥界の王妃PersephoneペルセフォネΠερσεφόνη; ローマ神話ではProserpinaプロセルピナ)に預けられたが、王妃が溺愛して返すのを拒んだため、アフロディーテは全能の神Zeusゼウス (“Ζεύς”)に訴え、その裁定でアドーニスは二人の女神と4ヶ月ずつ暮らすようになった。しかし、アフロディーテの愛人Areusアレーウス (“Ἀρέως”)の企みでイノシシ狩りの最中に命を落としまった。アドーニスの血から生まれたのが“Anemoneアネモネ (“ἀνεμώνη”)”だといい、イチリンソウ属の属名に、そして主人公アドーニスの名は別属のフクジュソウにつけられた。因みに種小名はラテン語の“ramosus”に由来し、「枝の多い」「分枝した」という意味である。根生葉と下部の茎葉は膜質で、上部の茎葉は互生して掌状〜羽状に分裂し、裂片は幅が狭く、縁は全縁ないし鋸歯がある。花期3~4月。花序は主茎や側枝に頂生し、ほうのない花を1個つける。萼片がくへんは5~8個あるが、結実すると脱落する。花弁は5~25個、雄しべは多く線形の花糸を伴う。雌しべは多くらせん状に配置される。結実して痩果そうかとなるが集合果である。『毛吹草けふきぐさ(1645年)に「福寿草 元日草とも」とあり、別名の“元日草”も出てくるので、俳諧の季語であった。ただし、元日といっても旧暦であり、新暦では2月上旬ごろに当たり、ちらほらと開花が報じられる時期である。根を福寿フクジュ草根ソウコンと称し民間で強心利尿薬とするが、毒性が強く中毒事故がしばしば発生する。主成分は強心配糖体アドニトキシン(Adonitoxin)で、構造式は「主な有毒強心配糖体の構造式」を参照。
引用文献:References参照。