【解説】 本邦各地の山地から高山の日当たりのよい湿ったところに群生する多年草。茎は、通例、分枝せず真っ直ぐに伸びる。 葉は長楕円形で互生し、先が尖り、縁は全縁である。根出葉は長さ約20cmになり、長い葉柄をもつ。茎の上部の葉は葉柄がなく基部で茎を抱く。茎先に長さ約6cmの総状花序を形成し、 白〜淡紅色の花を多数つける。 5裂して白い筒状のものは花弁ではなく萼である。花期7~8月、熟して3稜のある 痩果となり、種子は茶色で光沢がある。拳状の根茎を拳参と称して止瀉、止血、解毒薬とする。拳参の名が本草に初見したのは『圖經本草』(蘇頌)であり、現存本草書では『證類本草』巻末の本草圖經本經外草類に収録されるが(附図)、記載はごく簡潔にすぎず、『本草綱目』(李時珍)でも記載の追加はなく、中国では本格的に薬用にされることはなかった。和名は“伊吹虎の尾”で、花穂を「虎の尾」に見立て、伊吹山で最初に発見されたことから名付けられた。わが国における文献上の初見は『草木弄葩抄』(1735年)で「伊吹虎の尾 漢名拳参」とある。属名はラテン語で「二度」を意味する“bis”と「ねじれた」という意の“torta”からなり、根のねじれているさまを表し、拳参という漢名とも合致する。本種の母種は欧州で伝統的に収斂薬として用いられたが、『薬物誌』に該当する品目は見当たらない。
引用文献:References参照。