オオグルマ(キク科)
Inula helenium (Asteraceae)

oguruma

→戻る(2006.7.4;帝京大学薬用植物園)

【解説】 欧州~中央アジア原産の多年草で、成長すると90 ~150cmに達する。葉は大きく鋸歯があり、下部の葉は有柄、ほかは無柄で茎を抱く。葉身は卵形〜楕円形または披針形で、長さは30cm、幅は12cmになる。葉の上面は緑色でまばらに毛が散在し、下面は厚い綿毛で白くなる。花期7~8月、茎先に50〜100個の黄色の舌状花と100〜250個の黄色の筒状花からなる最大径5cmの頭状花序をつける。根は太く枝分かれし、粘液質で苦味があり、樟脳ショウノウのような匂いのほか、スミレに似た甘く淡い匂いがある。和名は大尾車でオグルマInula britannica L. subsp. japonicaに似て大型の意。種小名は世界で最も美しい女性と言われたギリシャ神話の“Ἑλένη” (Helen)Helen of Troyトロイのヘレンに因んでつけられ、彼女の涙が落ちたところから芽を出したのが本種、あるいはこの草の採取中に誘拐されたという伝説に由来する。『薬物誌』ではELENION(ヘレンに所以があり、彼女が蒔いた植物、すなわち本種のこと)とあり、附図は頭花を除けば本種の特徴をきわめて忠実に描写している。薬能については根を煎じて飲むと体を温め、利尿、通経を誘発し、根を蜂蜜入りのシロップに入れて摂取すると、咳、喘息、ヘルニア、けいれん、鼓腸などに効果があり、またブドウ酒で煮た葉は坐骨神経痛によいという。漢名は土木香ドモッコウで、本草では『圖經ずけい本草ほんぞう蘇頌そしょうにこの名が初見する(『證類しょうるい本草ほんぞう』巻第六「木香モッコウ」所引)が、中国本草で正品となることはなかった。属名は古代ギリシア語で「浄化する」という意味の“ἰνάω” (ináō)に由来するという。
引用文献:References参照。