オニナベナ(スイカズラ科)
Dipsacus fullonum (Caprifoliaceae)

oninabena

→戻る(2004.7.17;帝京大学薬用植物園)

【解説】 ユーラシア、北アフリカ原産で、成長すると2mにも達し、茎には細かいトゲがまばらにつく。葉は対生し、形は披針形で長さ20〜40cm、幅3〜6cmあり、下面の主脈に小さなトゲがあり、全縁。対生の葉が茎に癒着するとカップ状になって雨水が貯まるようになり、後述の『薬物誌』もそのように記述する。アブラムシなどの昆虫が茎に登るのを防ぐ機能を果たすと考えられている。属名はラテン語の“dipsacos”に由来し、古代ギリシア語では“δίψακος” (dípsakos)といい、“διψάς (dipsás)は“渇き”を意味する。花期7~8月で、卵球形の花序は長さ4~ 10cm、幅3~5cm、基部にトゲのある苞葉ほうようが輪生する。花は頭花の中央あたりからリング状に開き始め、上下に向かって次々に咲き広がり、細い帯を2本形成する。小花の花冠は淡紫色で浅く4裂し、長さ8~10㎜mの筒状、花托の小苞片のトゲとともに雄しべも花の上に突き出る(→花の拡大画像。頭花は枯れても乾燥した状態で残るのでドライフラワーとして利用される。対生した葉と茎の接合部に溜まった水は民間で“ものもらい”などの眼疾患に用いるという。和名は在来同属種のナベナ(和名の由来は不明)に似て大きく豪壮だから名付けられた。別名ラシャカキグサは果穂に鈎形のトゲがあり、毛糸の編物の毛を立てるのに用いたことに由来する。『薬物誌』のDIPSAKON(附図)に相当し、根をブドウ酒で煮てワックス軟膏の厚さになるまで叩いたものを陰部に挿入すれば会陰えいんの亀裂や瘻孔ろうこうを治すという。種小名は英語の“fuller”に通じ、前述したように、リネンや羊毛をけば立てるのに使われたとげのある果実に言及した名である。
引用文献:References参照。