ピンピネラ(セリ科)
Pimpinella saxifraga (Apiaceae)

pimpinalla

→戻る(2013.9.7;北海道医療大薬用植物園)

【解説】 欧州~西アジア原産で、茎葉よも細くて小さな華奢な多年草。原産地では有用な家畜飼料として栽培されることもあった。葉は奇数羽状複葉でほとんどは根生し、小葉は鋸歯のある無柄の卵形で、通例、4対前後ある。茎頂か分枝した先端に複散形花序をつけ、白い小さな花を咲かせる。若葉は香辛料となり、根は刺激作用があり、健胃・去痰薬として用いられる。『薬物誌』で同属植物を基原とするものにアニスがあるが、本種に該当するものは見当たらない。属名の“Pimpinella”の由来はきわめて難解で一筋縄ではいかない。語源学的には古フランス語の“pimprenelle”(オランダワレモコウSanguisorba minor、さらに古く12世紀の“biprenelle”、および中世ラテン語でハヤトウリSechium eduleの名前“pipinella”が、植物種とは無関係に、名前だけが複雑な相関し合って発生したと説明されているが、わが国や中国でも類例が少なくなかったから不思議なことではない。あるいはラテン語の“piper胡椒”から派生した「胡椒のような」という意味の“piperinus”(果実が胡椒に似ているためという)との関連を指摘する見解もある。さらに本種が複雑に切れ込んだ葉をもつことを考慮すると、「双翼」を意味する“bipennis”から“bipinnella”へ転訛して“二回羽状複葉をもつ植物”と解釈する見解もある。一方、種小名“saxifraga”はラテン語で“stone-breaker”すなわち「石を砕く者」を意味する。岩が砕け散った中に生えるのではなく、尿路結石の治療に古代から使われていたことに由来するという。