セイヨウノコギリソウ(キク科)
Achillea millefolium (Asteraceae)

seiyounokogirisou

→戻る(2004.6.12;帝京大学薬用植物園)

【解説】 欧州原産の多年草。葉は茎生、いくぶんは抱茎性で、茎に沿ってらせん状に均等について、根元に近くなるほど葉は大きく葉柄も長くなり、長さは5~ 20cmで二回〜三回羽状に裂けてシダ状を呈する。花期は7~9月、4〜9個の総苞片そうほうへんをもつ頭状花序をつけ、白〜ピンク色の舌状花3〜8個と円盤状についた10〜40個の筒状花からなる(→花の拡大画像。花期の全草を発汗、解熱、降圧、利尿、泌尿器の防腐薬とする。一般にyarrowヤロウと称されるものは本種である。和名は西洋鋸草の義で、葉の形がノコギリに似ていることに由来する。属名はギリシャ神話に登場するトロイア戦争の英雄でホメーロスの『イリアス(“Ἰλιάς”)』の主人公でもあるAchilleúsアキレウス (“Ἀχιλλεύς”)に由来し、戦いの傷を癒すために行軍中でも持ち歩いていたといわれる。『薬物誌』のSTRATIOTES CHILIOPHULLOS(附図)に相当し、ディオスコリデスは大出血や新旧の潰瘍および瘻孔ろうこうによいと記載している。因みにSTRATIOTES (“στρατιώτης”) は古代ギリシア語で“兵士”の意で、本種が戦場で負傷した兵士の治療に用いられたことを表す。一方、CHILIOPHULLOSは同じく“χίλιοι” (khílioi; “one thousand”)と“ϕύλλον” (phullon; “leaf”)との複合語と解され、「千枚すなわち非常に多くの葉のある」という意になって本種の形態的特徴を反映する。種小名の“mille”は英語の“million”と同義の「何千の」の意で、本種の葉が無数に切れ込んでいることを表し、字義的には前述のCHILIOPHULLOSに同じである。
引用文献:References参照。