【解説】 欧州全域に野生する匍匐性の多年草。葉は披針形、葉柄は短く対生し、ごくまばらに鋸歯があり、先は鋭形で細かい毛が生える。各葉は3〜7本の葉脈があり、中脈から縁に沿って弓形に伸びる。花期は6〜8月で、茎の先に円筒状の花穂をつけ、その付け根に無柄の小さな葉が対生する。紫色の唇形花を花穂の下から上へと順に開花する。花冠は上下の裂片からなり、上唇は紫色で浅い帽子状、下唇は白色で3裂し、中央の裂片は両脇より大きく上向きである。英語では“self-heal”という別名があるように古くから傷の治療に用いられてきた。成長力が旺盛なため欧州ではグラウンドカバーとしてよく用いる。本邦をはじめ東アジアに分布する別亜種ウツボグサsubsp. asiaticaと極めて近縁である。欧州に広く分布するが、意外なことに『薬物誌』に該当する品目はない。属名は、歴史的に本種が治療に使用された喉の炎症を表すドイツ語の名前“die Bräune”から転訛した“Brunella”に由来するという。種小名はラテン語で“一般大衆”を意味する“vulgus”に、同じくラテン語の形容詞を表す接尾辞“-aris”を付したもので、本種が広く分布してどこにでもあるという意になる。