アジア西南部原産の落葉小高木。モモとともにモモ亜属(Subgenus Amygdalus)に分類され、内果皮に波形の皺の存在によって他の亜属と区別される。果実は核果で、種子のうち硬い外殻を除いたものが食用になる。戦国時代にわが国に伝わり、アメンドース(ポルトガル語amêndoaの訛り)と呼ばれたが、のちに『本草綱目』(李時珍)の扁桃で表すようになった。種仁が食用になるスイート種(甘扁桃)と食用にならないビッター種(苦扁桃)があるが、学名上は区別しない。ビッター種は青酸配糖体のアミグダリンを多く含むため、味が苦いだけではなく有毒である。初版~第五改正版局方、国民医薬品集は甘扁桃、初版、第三~第四版局方は苦扁桃を収載した。いずれも扁桃油(甘・苦扁桃油と区別することもあるが、品質は変わらない)の原料とし、乳剤・化粧品用基剤などに用いた。苦扁桃は苦扁桃水(杏仁水に似たもの)を製し、鎮咳薬とした。元代の飲膳正要の八擔仁、本草綱目の巴旦杏は甘扁桃である。