アフリカ原産とされ、ニジェール川流域に起源を発するサバンナ農耕文化の標徴種と考えられている(中尾佐助、花と木の文化史)最古の栽培植物の一つ。食用にも利用されるが、もっとも顕著な用途は成熟果実を容器、楽器などの用具とすることである。長い間にわたって栽培されたこともあって、多くの品種に分化し、とりわけ果実の形態は巨大で丸みを帯びたもの、小さくてボトルの形をしたもの、またはスリムで曲がりくねったもの、二つにくびれたものなど多様である。英語名をgourdあるいはbottle gourdともいう。しばしばcalabashとも呼ばれるが、もともとはフクベノキを指していたのが混同されたのであり、いわゆるフクベをcalabash gourdsということもあってややこしい。古今東西のいずれの世界も道具の名が先にあってそれが原料植物に転じたと推定される。日本語の古名“ひさご”も例外ではなく、柄杓や提子もその関連語である。“ひさご”に対応する漢名は瓢・瓠・匏の3つがあり、それぞれヒョウタン・ユウガオ・フクベを表す。ヒョウタンを瓢箪とも表すが、わが国独自の名称であり、論語・雍也篇にある「一箪の食、一瓢の飲、陋巷に在り」から抽出した箪瓢が転じた(拙著、和漢古典植物名精解)。ヒョウタンを容器としたのは先史時代にまで遡り、もっとも古い遺物は東アジアから知られている。