五條天神社は大己貴命(大国主命の本名)と少彦名命を主神として祀る神社であるが、江戸時代初期から菅原道真も合祀したので、天神の名も併せ持つ。大己貴命、少彦名命は、日本で古くから医薬の祖として崇められる神なので、五條天神社では病鬼を退散させる追儺の神事がしばしば行われる。毎年、2月3日に行われる「うけらの神事」もその一つであり、節分祭、蟇目式とともに催される。この神事では、社殿内の儀式の間中、「うけら(オケラのこと)」を焚き続け、邪気を祓う。参拝者には「うけら餅」が配られる(有料で300円)が、餅とともに「うけら」も受けられ、立春の日(2月4日)に「うけら」を焚きながら餅を焼いて食べると、一年間無病健康に過ごすことができると伝えられ、江戸時代に流行したという。実際に配られた「うけら」は、ホソバオケラの根茎である蒼朮であった。無論、オケラの根茎である白朮を焚いてもかまわない。ソウジュツ、ビャクジュツのいずれも漢方医学の要薬であるので、医薬祖神の神事に相応しいといえる。但し、「うけら」を焚くのは漢方医学と直接関係はなく、中国の神仙思想に起源が求められるようだ(→詳しくは日本の伝統習俗とオケラの関わりを参照)。