インドネシアの伝統医学
→戻る

 インドネシアの伝統医学はインドと密接な関係があるといわれる。今日のjamugendungインドネシアで広く用いられる生薬配合薬ジャムゥーのかなりの部分はアユルベーダと共通するからである。いわゆるジャムゥーとは生薬製剤も含めた植物を基原とする薬物の総称であり、またインドネシアの伝統医学の代名詞ともなっている。しかし、その医療法は患者の問診を主とし多少とも他の伝統医学で見られるような触診はなく、症状を聞いて自分の記憶の中から最適な生薬を配合する、われわれの感覚からすれば医者というより薬剤師に近い存在である。したがって、医学書に相当するものはなく、配合生薬の種類、調合法、どういう病気に処方するかはすべて口伝、世襲で伝承されている。治療理論に相当するものは口伝されておらず、インcrudemarketドネシアという地理学上の位置を考えるとアユルベーダのみならずその他の伝統医学の影響を少なからずうけていると考えられる。ジャムゥーはインドネシア人の生活に奥深く根ざしており、現地でジャムゥー・ゲンドゥンと称する薬の行商人(写真右;大半はジャワ人女性)が植物基原生薬の冷水抽出エキスあるいは新鮮植物の絞り汁(新鮮薬用植物を多用することがインドネシア伝統医学の際立った特徴の一つである)を売り歩く姿はごく日常的であるが、最近では合成薬品が添加されることが多くスポーツ選手がドーピングの被害に遭遇することもあるという。また、熱帯の豊かな生物多様性を背景としているだけに生薬マーケット(写真左)にはおびただしい種類の生薬が所狭しと山積みされているのを見かける。最近では、こうした生薬類の品質を標準化して錠剤などの生薬製剤として薬局で販売する傾向が強まっておりこのような光景も過去のものとなりつつあるようである。