アリドオシ(アカネ科)
Damnacanthus indicus var. indicus (Rubiaceae)

関東地方以西の本州、四国、九州、沖縄の山地の林下に生育する常緑の低木。国外では朝鮮半島南部からインド東部、東南アジアに分布する。葉は光沢があって質は固く、形は卵円形〜卵形で対生する。葉腋に1対の鋭いトゲがあり、葉に対して垂直方向に出る。花期は5月ごろ、葉腋に白い漏斗型の花を2個つける。結実して球形の液果をつけ成熟すると赤くなる。名は「地錦抄附録」(伊藤伊兵衛政武、1733年)有通ありどほしとあるのが文献上の初見であるが、名の由来は、紀貫之が蟻通ありどおし神社(大阪府泉佐野市長滝)の神域で自分が乗った馬が倒れたために、「かきくもり あやめも知らぬ 大空に ありとほしをば 思ふべしやは」と詠んで神の物咎ものとがめを治めたという故事に基づく。因みに「ありとほしをば」は「有と星」と「蟻通(神社)」を掛け、一面に曇って見分けもつかない大空に星があるともわからないように、蟻通明神のお社があると思うでしょうか、とこの歌は通釈されるので、「有通」と「蟻通」の両名を挙げている。このうち一般には「蟻通し」の名が普及し、その語源は蟻も刺し貫くほど鋭いトゲがあるから、あるいはトゲが多くてアリのような小さい虫でないと通り抜けられないからと解釈されている。伊藤伊兵衛は別名に“鳥とまらず”も挙げているので、鋭いトゲから神社名を借用してつけたことは間違いあるまい。「開寶かいほう本草ほんぞう」の木部中品に収載された伏牛花フクギュウカ一名隔虎刺花(「本草綱目」は虎刺コシとする)を本種の漢名に充てる。別名の一両いちりょうセンリョウ(千両)、マンリョウ(万両)とともに正月の縁起物とされたことによる。

aridooshi

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