オオバコ(オオバコ科)
Plantago asiatica (Plantaginaceae)

oobako

→戻る(2005.5.29;町田市小山)

【解説】 本邦全土の日当たりのよい道端や荒地などに普通に生える多年草で、人の踏みつけによく耐えて生える。葉は長い葉柄があって根生し、葉身の形は楕円形〜広卵形あるいはさじ形と多様で、葉先は鈍頭、基部は漸鋭尖形でそのまま葉柄となり、縁は全縁かまばらな鋸歯状、質は厚く、葉脈は中脈・側脈の区別がほとんどつかず、縦に基部まで平行に達する。花期は4~9月、根から長い花茎を伸ばし、先に白色の小さな花が密についた穂状花序をつけ、下から上に向かって順次開花する。成分としてフラボノイド配糖体やポリフェノール配糖体アクテオシドを含む。同属外来種にヘラオオバコツボミオオバコがある。種子を車前子シャゼンシと称し、『神農しんのう本草經ほんぞうきょう』の上品に、また花期の全草を車前草シャゼンソウと称し、『名醫めいい別錄べつろく』の上品に収載される。車前子・車前草のいずれも現行局方の収載品である。漢名の由来は、『埤雅ひが(北宋・陸佃りくでんに「く牛馬の跡の中に生ず。故に馬舄、、當道とふなり」とあるように、牛馬車がよく通行するところにも生えるという生態的特性を表したもので、むしろ人や車が通らないところではほかの草類との競争に負けてしまう。『本草ほんぞう和名わみょう』と『和名抄わみょうしょう』のいずれも「車前子 和名於保おほ波古ばこ」とあり、この名は今日にまで至る。わが国では本種は漢方薬のイメージが強いが、オオバコ属植物は世界中で古くから薬用とされてきた。『薬物誌』ではARNOGLOSSON、ARNOGLOSSON MIKRONがオオバコ属種に相当する。ARNOGLOSSON (αρνόγλωσσον)は古代ギリシア語の“子羊”を意味する“ἀρνός” (arnós)と“舌”を意味する“γλῶσσᾰ” (glôssa)の複合語に由来し、「子羊の舌」という意になる。おそらくオオバコの葉を擬えた名と思われる。MIKRONは古代ギリシア語で「小さい」という意の“μικρός” (mikros)の中性形“μικρόν” (mikron)である。ディオスコリデスは「大きいもの」と「小さいもの」の2種をあげているが、前者が薬用として優れるARNOGLOSSONであり、P. majorまたはP. latifoliaに、後者がARNOGLOSSON MIKRONでP. minorまたはP. mediaに充てられている。全草を外用すれば、収斂作用があるので、瘡瘍や癰疽などに効くとされ、内用すれば下痢、疝痛によいという。一方、種子は下痢、吐血を止め、歯痛を鎮めるとしている。今日の欧州ではエダウチオオバコP. indicum (synon. P. psyllium)ほか同属植物の種子をPsylliumシリウムと称して便秘の解消や予防などのサプリメントとして用いる。『薬物誌』ではPSULLION(“ψύλλιον”)に充てられ附図、その名は古代ギリシア語でノミ(蚤)を意味する“ψύλλα” (psúlla)に由来し、種子がノミに似ていることによる。属名はラテン語で「足の裏」を意味する“planta”に由来し、一般的なオオバコ属の葉の形が似るからという。種小名は「アジアの」という意で、古代メソポタミアのアッシリア・バビロニア語で「上る」を意味する“asu”に由来し、「日の上がる地」の意という。