ユーラシア原産の一~二年草。葉は浅い切れ込みのある掌状で、花は約1センチ内外でアオイ科としては小さく、色は淡紅色で葉腋につく。日本には古くから渡来し野菜あるいは薬用に利用され、現在では暖地の海岸地帯に野生化している。葉を火で軽くあぶると、海苔のような風味があるので陸海苔の別名で呼ばれることがあるが、実際に利用されるのは欧州原産の変種オカノリvar. crispaであり、しばしば混同される。オカノリは江戸時代に渡来したが、フユアオイはずっと古い時代に渡来したと考えられている。種子は冬葵子と称し神農本草經上品に収載される歴史的薬物である。延喜式の諸國進年料雜藥には葵子の名で諸国から貢進された記録がある。本草和名には「冬葵子 阿布比乃美」とあり、万葉集に詠まれる「あふひ」はこれをもってフユアオイと考えられている(拙著「万葉植物文化誌」を参照)。