二次代謝産物の生合成前駆体
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 二次代謝産物はいうまでもなく各生物種によって生産される有機化合物群である。分子量、構造的にきわめて多様性に富むので地球上最大の化学物質ライブラリーといわれており、新薬創製に必要なシード物質のソースとしてもっとも注目されている。一般に、二次代謝産物の構造は複雑なものが多いが、よく見ると構造的に類似するもの、あるいは共通の部分構造を有するものがある。図1は二次代謝産物で医薬品として利用されているアルカロイドの主なものを挙げた(→植物起源医薬品参照が、複雑な構造で一見関係がないように見えるものも、図に記したように共通の基本骨格を見出すことができる。

図1 複雑な化合物の構造の中に共通コンポーネントがある例

 これによく似たことは他の二次代謝産物でもあり、いわゆる”イソプレン則”、”ポリケチド則”は、天然物化学の黎明期に先駆的研究者により気付かれたものである。以上のことは二次代謝産物は限られた共通の前駆体から一定の経路(生合成経路という)にしたがって生体内で規則的に合成されていることを示唆し、後に放射性同位元素で標識されたトレーサー実験で実証された。今日、二次代謝産物の共通の前駆体、すなわち生合成前駆体とされているのは、アセチルCoA-マロニルCoA、メバロン酸(Mevalonic acid)、シキミ酸(Shikimic acid)、 ある種のアミノ酸(図2)である。このうち、メバロン酸はいわゆるイソプレノイドの前駆体であるが、現在では、イソプレノイドの中でメバロン酸を経由しないものも知られているので、直接の前駆体でイソプレン骨格を有するジメチルアリルPP (Dimethylallyl pyrophosphate; DMAPP)-イソペンテニルPP (Isopentenyl pyrophosphate; IPP) を前駆体と考えるのが適切とされている。図3は一次代謝経路と二次代謝経路の相関を示したものであるが、上述の二次代謝産物の生合成前駆体は、解糖系、クレブス回路など生物の基本的物質代謝経路における中間体であり、二次代謝産物は一次代謝経路からスピンアウトして生成したものであことがわかる。この部分は各生物種に固有の経路なので、各生物の生存にとって二次代謝産物は必ずしも必要不可欠の存在ではない。

図2 二次代謝産物の生合成前駆体


図3 一次代謝と二次代謝の相関