ホザキノイカリソウ(メギ科)
Epimedium sagittatum (Berberidaceae)

hozakiikarisou

→戻る(2004.4.3;帝京大学薬用植物園)

【解説】 中国原産の常緑多年草。根茎から細長い茎を叢生し、長い葉柄の先に1〜3回3出複葉をつける。小葉は矢じり形で、縁に鋭い鋸歯がある。茎の途中から長い花柄を出し総状花序をつける。白い内萼片ないがくへんと黄色い花弁をもつ小さな花を下向きにつけるが、 距は短くいかり形にならない。全草を淫羊藿インヨウカクと称し、強壮、強精薬として陰萎、男性不妊、月経不順などに用いる。本草では『神農しんのう本草經ほんぞうきょう』の中品に収載され、『本草ほんぞう和名わみょう』は「淫羊藿 和名也末止やまど利久佐りぐさ」の和訓をつけた。しかし、本種はわが国に自生しないので、邦産する同属種イカリソウ (Epimedium grandiflorum var. thunbergianum)を淫羊藿インヨウカクと称し代用とした。『和爾雅わじが(1688年)では淫羊藿に“イカリクサ”の訓をつけ、それが邦産種の和名の由来となった。『本草ほんごう綱目こうもく啓蒙けいもう(小野蘭山、1803年)に「花戸ニ唐種ノ淫羊藿ト呼ブモノアリ。葉、和産ヨリ長大ニシテ厚シ。六葉ノ端ニ四出ノ小花數多ク穗ヲナシテ直生ス。〜イカリサウノ花形ト大ニ異ナリ〜」(巻之八「草之一」)とあり、19世紀初頭までに本種が伝わっていたことを示す。『梅園ばいえん草木そうもく花譜かふ(1833年)の春之部四に載る「淫羊藿 一種 漢種白花ノ者」とあるものは本種と思われる。属名は古代ギリシア語の“ἐπιμήδιον” (epimēdion)に由来するが、そのラテン名であるepimediumも含めて語源は不詳である。種小名は、「やり」を意味するラテン語の “sagitta”に由来し、矢の形をした葉を指す。因みに、『薬物誌』にあるEPIMEDIONに対して、通説はEpimedium alpinumを充てる。しかし、ディオスコリデスは茎にcissus(古代ギリシア語:“Κισσός”、ツタのこと)に似た葉を10~12枚つけると記述し、その特徴は附図におぼろげながらも反映されているが、およそEpimedium属には見えない。
引用文献:References参照。