カッコウチョロギ(シソ科)
Betonica officinalis (Lamiaceae)

kakkochorogi

→戻る(2005.7.22;英国王立キュー植物園)

【解説】 欧州原産の多年草。全体に白い細毛が密生し、茎は直立して4稜がある。葉はややしわのある楕円形~長楕円形で葉柄はごく短く対生し、基部は心形、鋸歯がある。花期は5~7月、茎の先に穂状花序をつけ、淡紅色の唇形花を咲かせる。萼は5裂した筒状で縁に剛毛がある。欧州では全草を民間薬とし健胃消炎薬として用いる。和名は茎葉が藿香カッコウ(シソ科カワミドリに、花がチョロギに似ていることによる。ただし、本種の根は髭根であり、現在では塊茎を形成するチョロギとは別属に分類される。『薬物誌』のKESTRON(附図)に考定されているが、葉が対生となっていないので、シソ科ではないという見解もあるが、葉の特徴は誇張気味ながらよく表されている。薬能については、根を蜂蜜に和して服用すれば催吐、葉はけいれん、ヘルニア、子宮疾患によく、地上部をブドウ酒とともに服用すれば毒獣による解毒になり、利尿作用があり、便通をよくするほか、てんかん、精神錯乱、肝臓病などにもよいという。また成熟種子をつけた地上部からOINOS KESRITES[OINOS (“οίνος”)は古代ギリシア語でワインの意]を作るという。この薬名は古代ギリシア語の「鋭い」という意の“κέστρος” (késtros)に由来し、花冠あるいはやくが尖っていることを指すと思われる。属名は古フランス語の“betoine”、ラテン語の“betonica”に由来し、また古代イベリアの部族であるVettonesヴェトン人に所以があり、“vettonica”が転じた名という説がある。種小名はラテン語で「薬用にする」の意。江戸末期の1818年、大槻玄沢・宇田川榛斎の建言により、オランダより取り寄せた薬草60種の中に“Betonie”の名が見え、確実な資料では本種の初渡来の記録である(「洋舶盆種移植の記」)
引用文献:References参照。