クロモウズイカ(ゴマノハグサ科)
Verbascum nigrum (Scrophullariaceae)

kuromouzuika

→戻る(2004.6.12;帝京大学薬用植物園)

【解説】 ヨーロッパ原産の多年草で高さ1mほどになる。英名はdark mullein、black mulleinで、mulleinマレィンはモウズイカ(Verbascum)属植物の総称。草地、河原の土手、道端、荒地、林縁、岩の多い丘に生える。葉は根元近くではロゼット状に、中上部の茎では互生する。根生の葉は葉柄が長く沿着状になるが、最上部では無柄で沿着しない。葉身は卵形、基部は心形、縁に鈍い鋸歯、上面にまばらに毛があり、下面にフェルト状の毛がある。花期は7~9月で、花柄は短く穂状花序状をなしてややまばらに花がつく。花冠は黄色で筒状花が5深裂、大きく平開して先は丸く、がくも5深裂する。雄しべは5個あり、花糸に赤茶色の長い毛が生え、雌しべは花柱が短く柱頭が目立つ(→花の拡大画像。果実は蒴果さくかで短い白毛が密生し、熟して裂開し小さな種子を多く排出する。モウズイカが毛蕊花の意味であり、花糸に毛が生えていることに由来することはビロードモウズイカの項で述べた。和名に“クロ”の名が冠せられるのは種小名がラテン語で“黒”を意味するからであろうが、その割にはどこにも黒い部分は見当たらない。強いて言えば花の濃い赤茶色がよく目立つのでそれを誇張したか、あるいは属名“Verbascum”に「ひげを生やす」という意味があるからか。『薬物誌』のPHLOMOS MELAIA(附図)に相当することはビロードモウズイカの項で詳述してあり、薬能もビロードモウズイカに準じる。江戸末期の1818年、大槻玄沢・宇田川榛斎の建言により、オランダより取り寄せた薬草60種の中に見える“Wolle kruid”はVerbascumの意、わが国への初めての渡来の記録であるが、ビロードモウズイカとともに渡来したと思われる。(「洋舶盆種移植の記」)
引用文献:References参照。