ニガヨモギ(キク科)
Artemisia absinthium (Asteraceae)

nigayomogi

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【解説】 ヨーロッパ~シベリア南部原産で繊維質の根をもち独特の臭いがある多年草。第三~第四改正版局方では苦艾クガイの名で収載された。葉はらせん状につき、上面は緑がかった灰色、下面は白く絹のような銀白色の毛状突起で覆われ、油腺がある。根出葉は長さ25cmに達し、2回〜3回羽状に切れ込み、長い葉柄がある。一方、茎葉は長さ5~10cmで、あまり分裂せず葉柄も短く、最上部の葉は単葉で無柄が多い。花期は7〜9月で、淡黄色の筒状花のみからなる頭状花序を葉腋から出して頭花をやや下向きにつける。アブシンチンという強苦味成分を含み、苦艾の名はそれに基づく。アブサン酒は本品をブランデーに浸したものであるが、常用すると中毒症を起こすため、現在では多くの国で販売が禁止されている。精油の主成分はツジョン(ツヨン)という有毒成分であり、アブシンチズム(absinthism)と呼ばれる中毒症の原因物質である。『薬物誌』のAPSINTHION(附図)に相当し、体を温め、収斂作用があり、消化を促進し、胃や腸に溜まった胆汁物(四体液病理説に基づく黄胆汁または黒胆汁)を取り除き、過食を防ぐなど多くの薬能が記載されている。OINOS APSINTHITESは本種にいろいろなものを加えて製したワイン(古代ギリシア語の“οἶνος”OINOSで、胃、泌尿器、肝臓に作用して腎臓病や黄疸に効果があり、消化を促進し、食欲を増進し、神経性胃障害や通経などに用いるという。属名はギリシア神話で狩猟、原野、野生動物、自然、植生、出産、子供の世話、貞操をつかさどる女神“Ἄρτεμις” (Artemis)に因み、種小名は“ἀψίνθιον” (apsínthion)すなわち『薬物誌』の薬名に由来する。
引用文献:References参照。