【解説】 インド原産といわれる1年草で、わが国の一部で帰化しているところがある。葉は互生し、葉身は披針形~卵状披針形で先が尖り、基部はくさび形でほぼ全縁。花期は5〜11月で、茎の先に長い円錐形の花序をつけ、上部は濃ピンク色、下部は白〜淡ピンク色でローソクの炎のような形になる。果実は数個の種子を含む小さな胞果で熟すと裂開する。種子は黒く扁平で光沢がある。本草では『神農本草經』の下品に青葙草とあるものが本種に相当し、『本草和名』は「青葙 和名宇末佐久、一名阿末佐久」の和訓をつけたが、この字義は不詳。『和爾雅』(1688年)では青葙子に“ノケイトウケ”の和訓をつけ、「野鷄冠並同」(「青葙子と野鷄冠は並に同じ」という意味)と注釈する。同書では別項に鷄冠花を収録し、“ケイトウゲ”の和訓をつけているので、ノゲイトウの名の初見は『和爾雅』と考えてよい。一方、『本草綱目啓蒙』(小野蘭山、1803年)は“イヌゲイトウ”の別名も挙げている(巻之十一「草之四 青葙」)。因みにケイトウはノゲイトウの同属別種であり、本草では宋代の『嘉祐本草』(掌禹錫)の下品に雞冠子の名で初めて収載され(『證類本草』巻第十「草部下品 青葙子」)、薬用部位は種子である。属名は古代ギリシア語の“κήλεος” (kḗleos)に由来し、「燃えている」という意でローソクの炎のような花序を暗示する。種小名はラテン語のargenteusの女性形で“銀”の意、銀の元素記号Agと同じ由来である。
引用文献:References参照。