ノゲイトウ(ヒユ科)
Celosia argentea (Amaranthaceae)

nogeitou

→戻る(2006.7.29;帝京大学薬用植物園)

【解説】 インド原産といわれる1年草で、わが国の一部で帰化しているところがある。葉は互生し、葉身は披針形~卵状披針形で先が尖り、基部はくさび形でほぼ全縁。花期は5〜11月で、茎の先に長い円錐形の花序をつけ、上部は濃ピンク色、下部は白〜淡ピンク色でローソクの炎のような形になる。果実は数個の種子を含む小さな胞果ほうかで熟すと裂開する。種子は黒く扁平で光沢がある。本草では『神農しんのう本草經ほんぞうきょう』の下品に青葙草セイソウソウとあるものが本種に相当し、『本草ほんぞう和名わみょう』は「青葙 和名宇末うま佐久さく、一名阿末あま佐久さく」の和訓をつけたが、この字義は不詳。『和爾雅わじが(1688年)では青葙子に“ノケイトウケ”の和訓をつけ、「野鷄冠並同」(「青葙子と野鷄冠はともに同じ」という意味)と注釈する。同書では別項に鷄冠花を収録し、“ケイトウゲ”の和訓をつけているので、ノゲイトウの名の初見は『和爾雅』と考えてよい。一方、『本草ほんごう綱目こうもく啓蒙けいもう(小野蘭山、1803年)は“イヌゲイトウ”の別名も挙げている(巻之十一「草之四 青葙」)。因みにケイトウはノゲイトウの同属別種であり、本草では宋代の『嘉祐かゆう本草ほんぞう掌禹錫しょううしゃくの下品に雞冠子ケイカンシの名で初めて収載され(『證類しょうるい本草ほんぞう』巻第十「草部下品 青葙子」)、薬用部位は種子である。属名は古代ギリシア語の“κήλεος” (kḗleos)に由来し、「燃えている」という意でローソクの炎のような花序を暗示する。種小名はラテン語のargenteusの女性形で“銀”の意、銀の元素記号Agと同じ由来である。
引用文献:References参照。