シオン(キク科)
Aster tataricus (Asteraceae)

shion

→戻る(2004.10.18;帝京大学薬用植物園)

【解説】 本州中国地方、九州の山地の湿った草地に生える高さ2mほどになる多年草で、国外では朝鮮、中国北部、シベリアに分布する。葉や茎はまばらに剛毛がつき、触るとざらつく。根生葉は大型のへら状長楕円形で50cm以上になるが、花期になると枯れる。茎葉は長さ20〜35cm、幅6〜10cmの卵形〜長楕円形で、上部のものほど小さく狭くなり先はやや尖る。花期は8~10月で、頭花は直径3〜3.5cm、舌状花は淡青紫色、筒状花は黄色でほぼ扁平に花床につく。総苞そうほうは半球形、総苞片そうほうへんの先は尖って3列に並びそり返らない。痩果そうかは小さな長楕円形で毛が密生して黒い。漢名を紫苑シオンと称し、『神農しんのう本草經ほんぞうきょう』の中品に収載された。『本草ほんぞう和名わみょう』は乃之のしの和訓をつけたが、一方、『和名抄わみょうしょう』は「和名能之のし、俗に云ふ之乎迩しをに」とあるように、紫苑(紫菀とも表記する)を音写したもう一つの和訓“しをに”(当時は“ん”の表記はなく、“に”や“む”で表すかまったく無表示のこともある。『源氏物語』では「蘭」を“らに”とした用例がある。フジバカマの項を参照)を載せた。『古今和歌集』(『新編国歌大観』所収)の「振りはへて いざ古里の 花見むと 来ほひぞ うつろひにける」(物名 441)の物名歌に詠まれているように、結局、この名が普及して今日に至る。属名は古代ギリシア語で「star」を意味する“ἀστήρ” (astḗr)に、種小名は本種の原産地といわれるシベリアのタタール地方に由来する。
引用文献:References参照。