【解説】 欧州南部原産の常緑小低木であるが、一般にはハーブの一種とされる。茎は細く、地面を這うように伸び、よく分枝して広がり、先端は直立〜斜上する。葉は単葉でほとんど無柄で対生するが、所々で密に束生状となる。葉身は上面がやや灰色がかった緑色、下面はやや白く、長さ9〜12mm、肉厚の線形、長楕円形、やや細い披針形、長卵形、倒卵形など、その形態は多様である。縁は全縁、葉先は鋭頭〜鈍頭、やや上向きの弓形となり、中脈を中心として上面にそり返る。花期は5〜6月で、葉腋から短い花茎を出して輪散花序を形成し、白〜淡紅色の小さな唇形花を咲かせる。花の形は2唇形で上唇は浅く2裂、下唇は3裂して中央の裂片が大きく、4本ある雄しべは花冠の上に突き出る(→花の拡大画像)。地上部をthymeと称して古くから薬用にされた。『薬物誌』ではERPULLOS(附図)に相当し、飲み物に入れると月経血が排出され、尿意を引き起こし、塗布するとヘルニア、痙攣、肝臓の炎症、ヘビの咬傷に効果があるという。ERPULLOS (“έρπυλλος”)は本種の古代ギリシア名である。属名は古代ギリシア語の“θύμος” (thúmos)で“smoke”すなわち「けむり」の意といい、燃やして得られる強い匂いを医療に用いたことに由来するのかもしれない。成分としてモノテルペン誘導体のチモール (Thymol)が含まれる(→主な精油成分;関連ページ)。
引用文献:References参照。