ヤナギハッカ(シソ科)
Hyssopus officinalis (Lamiaceae)

yanagihakka

→戻る(2005.7.24;英国王立キュー植物園)

【解説】 地中海地方から南西アジア原産の高さ30~60cmほどになる亜低木。茎の基部は木質で、そこから多数の直立した枝を伸ばす。葉は濃緑色の披針形で対生し、長さは2〜2.5cmになる。花期は夏で、赤紫・ピンクから白色までさまざまな色の芳香のある花を咲かせる。熟すと小さな方形の痩果そうかを結ぶ。地上部をヒソップと称し、盗汗、慢性気管支炎、健胃、リウマチに用いるほか、ハーブティーとしても利用される。精油をヒソップ油と称し、薬用やリキュールに用いる。本種は形態的に多様でいくつかの亜種に区別することもある。この画像の個体はvar. angustifoliusのタイプであり、 白花で香りのよいとされるのはf. albusであり希産種である。『薬物誌』ではUSSOPOS(附図)とあり、イチジク、水、蜂蜜、ヘンルーダとともに煮て摂取すると、肺炎、喘息、内咳、カタル、起立呼吸症(喘息の一種)に効果があり、虫下しにもなり、下剤としてはカルダモンやイリス(Iris)と混ぜて服用すると効果が増強され、酢と煮た煎液で口をすすぐと歯痛を和らげるという。属名は古代ギリシア語の“ὕσσωπος” (ussopos)に由来する。ヘブライ語の“אזוב” (ezov)とも同源といわれるのは、聖書の詩篇51:7に「ヒソップで私を清めてください、そうすれば私は清くなるでしょう」とあり、旧約聖書にある“אזוב” (ezov) をヒソップに翻訳しているからである。それゆえにヒソップは“holy聖なる herbハーブ”と一般には認識されているが、聖書にいうヒソップはOriganum syriacum (オレガノの一種) で別種ともいわれる。種小名は「薬用にする」という意味で、英語ではしばしば“official”で表されることがあるが、正しくは“officinal”である。江戸末期の1818年、大槻玄沢・宇田川榛斎の建言により、オランダより取り寄せた薬草60種の中に、“Ysop”の名が見え、確実な資料による本種の初到来である(「洋舶盆種移植の記」)
引用文献:References参照。