ヨモギギク(キク科)
Tanacetum vulgare (Asteraceae)

yomogigiku

→戻る(2004.7.3;帝京大学薬用植物園)

【解説】 欧州からアジアの温帯に分布する多年草。茎は丈夫でやや赤みがかって直立し、高さ50~150cmになり、上部近くでよく分枝する。葉は長さ10~15cmで互生し、羽状にほぼ全裂して約7対の鋸歯状の裂片に分かれ、全体としてややシダのような外観である。花期は7~10月で、上部の盛んに分枝した茎の末端に黄色のボタン形の頭状花序を房状につける。頭花は筒状花のみから構成され、黄色に見えるのは筒状の花冠の上部が黄色で密集して咲くからである。全草に樟脳に似た芳香がある。いわゆるハーブのtansyタンジーは本種であり、調味料、芳香剤としても用途がある。ただし、精油にツジョンツヨン (Thujone)という有毒成分が含まれ、痙攣や肝臓・脳の損傷を起こす可能性があるので注意を要する。北海道に自生するエゾヨモギギクは本種の変種var. borealeに区別される。本種を『薬物誌』のARTEMISIA MONOKLONOSに充てる見解もある(通説はArtemisia vulgareが、附図は一般的なヨモギ類Artemisiaの特徴を表す。因みにARTEMISIA MONOKLONOSの薬能について、通経の目的で浴用とし、女性の子宮のうっ血を大幅に改善し、難尿を緩和すると記載され、主として婦人薬として用いられるようである。MONOKLONOSは“twigs”という意の“χλονοσ” (clonos)に“ただ一つ”の意のμόνος” (mónos)が冠した複合語で、ディオスコリデスのいう「一本茎のARTEMISIA」を表す。属名の由来については同属種のシロバナムシヨケギクを参照。種小名はラテン語で「普通の」という意で、どこにでもある植物ということ。江戸末期の1818年、大槻玄沢・宇田川榛斎の建言により、オランダより取り寄せた薬草60種の中に“Worm kruid”の名が見え、Tanacetumの確実な渡来の記録。種が明らかではないが、本種をオランダ語でBoeren worm kruidというから、含まれていた可能性はある。(『植物渡来考』所引、「洋舶盆種移植の記」)
引用文献:References参照。