本州、四国、九州の山野に普通に生える落葉高木であるが、列記とした薬用植物で、樹皮を抗潰瘍薬とする。葉は互生し、倒卵状円形で先は尖り、縁は全縁であるが、しばしば浅く裂ける。枝先に円錐花序をつくり、雌雄どちらも白色の小さな花を多数つけるが、雄株の雄花には黄色の葯が目立つ(画像1)。一方、雌株の雌花序は雄花序よりも小さくて花数が少なく、赤っぽく見えるのは花柱で花弁はない(下の画像)。花期7月。成分はイソクマリン骨格を有するベルゲニン(bergenin)であり、抗潰瘍性薬効成分である。その他、ゲラニインなどのタンニン、強心配糖体を含む。(→関連ページ)名は赤芽柏で、新芽が赤く(画像2)、葉が大きいのでカシワのように飯を盛りつけるのに用いたからこの名がある。万葉集に詠まれる「久木」は本種と考えられる。「波の間ゆ 見ゆる小島の 浜久木 久しくなりぬ 君に逢はずして」(11-2753)に詠まれる“浜久木”は“久しく”を導く序詞であるが、アカメガシワは浜辺のような厳しい環境にも適応して生える(画像3;山口県下関市豊北町角島 2012.10.23)ので、詠人は現実の情景を利用してこの歌を詠んだのである。しばしば漢名を楸と表すが本来の基原はトウキササゲCatalpa bungeiである。その詳細は拙著「l歴代日本薬局方収載生薬大事典」の第二部第1章を参照。