ヒメツルニチニチソウ(キョウチクトウ科)
Vinca minor (Apocynaceae)

himetsurunitinitisou

→戻る(2004.4.20;帝京大学薬用植物園)

【解説】 欧州中部地方原産の常緑つる性多年草。つる性とはいえ、茎に沿って根を張り大きく広がることはあるが、絡みついてよじ登ることはない。葉は長さ2~4.5cm、幅1~2.5cm、披針形〜広披針形、光沢がある濃い緑色の革質で、縁は全縁で先はやや尖り、対生する。花期は4~7月、花は紫色で直径2~3cm、5裂した花冠をもち、葉腋に一つずつ咲く。熟すると一対の長さ2.5cmの細長い莢状の果実を結び、中に多数の種子を含む嚢がある。インドールアルカロイドを含み、主成分のビンカミン(Vincamine)は血圧降下作用があり、欧州の一部で医薬として用いるという。ツルニチニチソウとよく似るが、本種はより小形(種小名のminorはこれを表す)で匍匐茎の各所で発根するなどで区別できる。有毒であるが、『薬物誌』ではKLEMATIS(附図1)と称して、葉と茎を噛むと歯痛が緩和し、ブドウ酒とともに服用すると下痢や赤痢を軽減し、ミルク、ローズ油、ハマスゲ油とともに膣坐薬ペッサリーにすると子宮痛を治すと記述されている。KLEMATIS (“κληματίς”)は 古代ギリシア語の“κλήμα” (klḗma)に由来し、「つる」「巻きひげ」の意である。KLEMATISといえば、まずセンニンソウ(Clematis)属を想起するが、『薬物誌』ではKLEMATIS ETERAに相当する(附図2)。ETERA (“ἕτερα”)は古代ギリシア語で“ἕτερος”に通じ、「他の、別の」という意味である。属名はラテン語の“vincire”を語源とし、“束縛”、“束ねる”という意味があり、おそらく古い時代には結紮ように利用したからだろう。
引用文献:References参照。