ヒモゲイトウ(ヒユ科)
Amaranthus caudatus (Amaranthaceae)

himogeitou

→戻る(2006.7.29;帝京大学薬用植物園)

【解説】 熱帯アメリカ原産の1年草。茎は太く直立し、通例、紅色を帯ぶ。葉は単葉で長さ5~10cm、幅3~6cmの卵形、軟質、縁は全縁で互生する。茎の先から長さ30cm、径1cmほどのの穂状花序を垂らし、花は小さく紅色で密につきく。成熟すると果皮が薄く種皮と離れた胞果ほうかを形成し、種子を食用とする。わが国で赤粟あかあわと称するのは本種である。和名は同科別属種のケイトウに見立てて紅色の花序がヒモ状であることに由来し、しばしば紐鶏頭と表す。『梅園ばいえん草木そうもく花譜かふ』夏之部一に本種の写実的な図絵が載り壬午みずのえうま写とあるので1822年に書写された)、「仙人糓ヨウラクケイトウ」の記述が見える。この和名はヒユ科ケイトウの類で、その長い花穂を仏教の装身具である瓔珞ようらく(珠玉や貴金属を糸で通して作ったもの)に見立てたことに由来する。名前だけであれば、『梅園草木花譜』より古く1818年に成立した『草木そうもく育種そだてぐさ』巻之下に「仙人穀せんにんこく 文化丙子(1816)年にう」とあり、わが国に渡来したのはそれより以前である。因みに仙人穀は紐鶏頭とともに漢籍に見当たらない和製漢名であり、中国では老鎗穀ロウソウコク千穗穀センスイコクあるいは尾穗莧ビスイケンと称する。ケイトウ、ヒモゲイトウのいずれの花序の紅色もベタレイン系色素のベタニン(Betanin)を主とする。属名は古代ギリシア語の“ἀμαράντινος” (amárantos)で“unfading”すなわち「萎れない」を意味する。“ἀ-”は“not”の意の接頭辞、“μαραίνω” (maraíno)は動詞で「萎れる」、そして“ἄνθος” (ánthos)は「花」を意味するから、全体として「萎れない花」の意になる。種小名はラテン語で「尾状の」を意味し、紐状の花穂を表す。<
引用文献:References参照。/span>