イヌハッカ(シソ科)
Nepeta cataria (Lamiaceae)

inuhakka

→戻る(2004.7.17;帝京大学薬用植物園)

【解説】 欧州~西アジア原産の多年草。茎に4稜があり白い細かい毛が密生する。やや茶色を帯びた緑色の葉は三角形〜卵形で粗い鋸歯があって対生する。花期は6月~8月、枝の先に総状花序をつけて小さな2唇形の花を咲かせ、花冠の色はピンクまたは白で、内部に淡い紫の細かい斑点がある(→花の拡大画像。葉と花穂の乾燥品を駆風、興奮薬とするほか、ハーブティーとしてよく用いられる。英名はCatnipキャットニップであるが、CatwortキャットワートCatmintキャットミントのいずれの別名もネコに因むのはマタタビのような効果があるからである。『薬物誌』ではKALAMINTHE(附図1)に考定されているが、ディオスコリデスは3種あるとし、本種はGLECHONMentha pulegium;メグハッカ、英名はpennyroyal;附図2と匂いが似てより大きく、ローマ人が属名と同じ“nepeta”で呼ぶというものに相当する。煎じ汁を服用すると利尿作用があり、ヘルニア、けいれ、起座呼吸症(喘息の一種)、腹痛、癇癪かんしゃく(不機嫌で精神が不安定なこと)、寒気に効き、ブドウ酒とともに服用すると防毒効果があって黄疸を消し、搗き砕いて煮るか生でブドウ酒・塩と混ぜて服用すると回虫と糸状虫を下し、膣坐薬にすれば堕胎や通経の効果があるなど多様な薬能を記載している。KALAMINTHEは接頭辞の“καλά” (kalá)とμίνθη (minthé)から構成される複合語で、“καλά”“κᾰλός” (kalós)に通じて“良質の”という意、一方、“μίνθη”はミントすなわちハッカのことで、「良質のハッカ」の意となる。属名はラテン語の“nepeta”に由来し、古代エトルリアの都市Nepeteに因むという。種小名はネコに関連があるというが、詳細は不詳。和名は犬薄荷で、ハッカに似て役に立たないからといい、古代ギリシアにおける評価とは大きく異なるようである。
引用文献:References参照。