キクイモ(キク科)
Helianthus tuberosus (Asteraceae)

kikuimo

→戻る(2005.8.11;帝京大学薬用植物園)

【解説】 北米原産の多年草で、大きく成長すると3mに達する。葉は茎の下部に対生するが、上部では互生となる。葉の質感はざらつき、茎の下部につく葉は大きな広卵形で先は尖り、長さは最大30cmになる。一方、上部の葉は小さく長楕円形である。花期は9~10月、直径5~10cmの頭状花序をつけ、10~20個の舌状花と60以上の筒状花が平らな円盤状につき、いずれも黄色である。花にはわずかな香りがある。塊茎(tuber;種小名はこれに由来)は食用になり、長さ7.5~10cmの細長くて不均一、一見、ショウガの根に似る。根にイヌリンを多量に含み、かっては糖尿病患者のための食用にされた。類似種で本邦各地に帰化するイヌキクイモは根が塊根とならないことで区別される。キク科に属して根が芋になるので菊芋という和名が付けられた。英語圏ではJerusalemエルサレム artichokeアーティチョークと呼ばれる。イタリア語ではヒマワリをgirasoleジーラソーレといい、エルサレムに訛ったのが名の由来という。欧州から清教徒Puritansが未開の荒野に「新しいエルサレム」を創造するのだという固い信念をもって新世界に入植したとして、この植物にエルサレムを冠した名前を付けたという別説もあり、米国ではこの説の方が有力だという。アーティチョークとも同じキク科であることを除いて共通点はない。属名は古代ギリシア語の太陽を意味する“ἥλιος” (hḗlios)と花を意味する“ἄνθος” (ánthos)からなる複合語に由来する。わが国に本種が伝えられたのはかなり遅く、『植物しょくぶつ圖説ずせつ雜纂ざっさん(伊藤圭介)にある本種の彩色図絵と記載文がわが国における文献上の初見である(211)。朱筆で明治9年6月の書き込みがあり、明治維新後に伝わったことになる。伊藤圭介の記載によれば、救荒作物として導入されたという。キクイモとともに、モノクロながらシロタエヒマワリHelianthus argophyllusの図譜も掲載され、有用とはいい難い種だけにキクイモに混入していたのかもしれない。
引用文献:References参照。