ラフマ(キョウチクトウ科)
Apocynum venetum (Apocynaceae)

rafuma

→戻る(2005.6.18;帝京大学薬用植物園)

【解説】 ユーラシア大陸の温帯に分布する多年草〜小低木で、茎はしばしば赤味を帯びて分枝する。葉は長さ2~5cmの長楕円形〜広披針形で対生し、葉先は鈍形で、縁は全縁、中脈を中心に内側にややそり返る。花期は6月ごろで、茎枝の先に集散花序をつけ、淡紅色で花をつけ、漏斗状で、先が5裂して外側にそり返った花冠をもつ花を咲かせる(→花の拡大画像。花弁の内外には赤い筋がある。本邦には変種のバシクルモンvar. basikurumonが北海道、本州北部に分布する。根にはシマリン(cymarin)などの強心配糖体が含まれ有毒であるが、中国では心不全の治療に用いた。葉には強心配糖体はほとんど含まれず、d-カテキン、クエルセチン、ルチンなどのポリフェノールに富み、降血、利尿の目的で健康茶として用いる。最近、わが国でもラフマ茶として輸入品が販売されている。ユーラシア西部では茎から採取される強靭な繊維を漁網、織物などに用いた。中国では新疆ウイグル自治区の羅布泊ロプノールが主産地らしく、それゆえに漢名で羅布麻ラフマ(羅布はロプノールを指す)という。属名はラテン語の“apocynon”に由来し、古代ギリシア語では“ἀπόκυνον” (apókunon)に相当する。『薬物誌』に同名のAPOCUNONがあるが、デオスコリデスは、本種の葉は犬、オオカミ、キツネ、ヒョウを殺すと記載し、東方の三博士(The Magi;キリスト降臨の際に贈り物をもってきたという三人の賢人)は“paralysis”と呼んだといわれる。字義を考えると、“ἀπό”は“from, away from”、“κυνός”は“dog”の意であるから、犬を殺すというディオスコリデスの記載と通ずるので、APOCUNONは本種に比定される。附図はあまり似ておらず、葉は強心配糖体を含まないが、根を葉と取り違えたと考えれば矛盾は解消する。種小名はラテン語で“青い”という意で鮮やかな青緑色の葉を表した。
引用文献:References参照。