地中海地方原産の一年草。花期4~5月。未熟果実に傷をつけて出る乳液を集めて乾燥したものがアヘンであり、モルヒネ、コデイン、パパベリン、ノスカピンなどアヘンアルカロイドと称する物質群を多く含み、鎮痛薬などの製造原料となる。アヘン法により栽培が厳しく規制されている薬用植物である。ケシの各品種はこちらを参照。アヘンの名はOpiumの漢訳である阿片(または同音の鴉片。アヘン塊の色が黒色だから鴉の字を充てたのだが、李時珍はその義不詳と述べている。李時珍はアヘン塊の実物を見たことがないようだ。)に由来する。本草綱目における正名は阿芙蓉であるが、芙蓉の名を付していることからケシの花に充てた名前であることは間違いない。阿片・阿芙蓉から類推するに中国語で「阿」がケシを表すか。中国本草でケシは甖子粟の名で本草拾遺に初見し、開宝本草は穀部に収載し異名として象穀・米嚢・御米・嚢子を挙げているので、当初はもっぱら栄養価が高い種子を利用したことがうかがえる。正統本草でケシが収載されたのは宋代以降であるが、和剤局方ほか当代の医書では罌粟の名で止瀉を目的とした処方に配合している。ただし罌粟はケシの果実の乾燥したもので、モルヒネは腸管の運動を顕著に抑制するので止瀉に利用されたのである。(→関連ページとしてアヘンの科学;アルカロイドについてを参照)