ウマノスズクサ属(Aristolochia sp.)に広く分布する腎障害を起こす物質で発ガン性があるともいわれている。中国産ボウイ(防已;日本薬局方ではオオツヅラフジSinomenium acutumの茎根を基原とする)で広防已と称するもの、同モッコウ(木香;日本薬局方ではSaussurea lappaの根)で青木香、南木香と称するものは、ウマノスズクサ属を基原とするので注意を要する。また中国産モクツウ(木通;日本薬局方ではアケビAkebia quinata、ミツバアケビA. trifoliataの茎)の中にも同じくウマノスズクサ属を基原とするものがある。いずれも日本薬局方に準拠するものであれば心配する必要はないが、中国から個人的に持ち込む場合、専門家による鑑定が必要である。また、サイシン(細辛)はウマノスズクサ科ウスバサイシン(Asiasarum sieboldii)、ケイリンサイシン(A. heterotoropoides var. mandschuricum)の根を基原とするものであるが、その地上部にはアリストロキア酸が含まれるので、異物として地上部が混入していないかどうか注意する必要がある。フェナンスレン骨格とニトロ基を有する特異な物質であるが(各種天然アリストロキア酸類)、生合成的にはアルカロイドである(→こちら参照)。