ボタンボウフウ(セリ科)
Peucedanum japonicum var. japonicum (Apiaceae)

botanboufu

→戻る(2004.8.26;帝京大学薬用植物園)

【解説】 関東地方~石川県以南の本邦の海岸地帯に生える多年草であるが、生態からいくつかに区別される。九州南部からトカラ列島に分布し1回開花枯死型をコダチボタンボウフウvar. latifoliumと開花後も枯死せずに開花を繰り返し南西諸島に広く分布するタイプをナンゴクボタンボウフウvar. australe、およびこの画像に示すような、九州西部以北に分布し秋に開花して多回結実性のvar. japonicumの3タイプがある。葉は広卵状三角形で薄い革質の1~2回3出複葉、小葉は卵状円形で3深裂し粉白を帯びる。葉柄の基部は鞘状になり、鞘は筒状に閉じることなく開く。花期は6~9月で、複散形花序をつけ、個々の小散形花序に小さな白い花が約20個つく。韓国では根を植防風ショクボウフウと称し、発汗、解熱、鎮痛薬とする。沖縄ではサクナ(別名:長命草ちょうめいぐさと称し葉を野菜として利用する。和名は薬味などがボウフウに類して葉の形がボタンに似ることによる。属名は『薬物誌』のPEUKEDANON (“πευκέδανον”)に由来し(附図)、その基原はP. officinaleと考定されている。属名は古代ギリシア語の“πευκέ” (peuke; fir)+“δανον” (-edanon; “dry, burning”)に由来すると考えられ、日本産同属植物からはおよそ想像できないが、本属のタイプ標本がモミ(英名:fir)の葉に似ていて、樹脂に富み、種子や植物体が乾燥質だったからだろう。
引用文献:References参照。