セイヨウアカネ(アカネ科)
Rubia tinctorum (Rubiaceae)

seiyoakane

→戻る(2013.9.7;帝京大学薬用植物園)

【解説】 欧州原産の常緑多年草で、長さ1m以上、径は最大12mmにもなる長大な根をもつ。葉は長さ5~10cm、幅2~3cmで、主茎の周りに4~7枚(通例、6枚なのでムツバアカネの別名がある)の葉が輪生状につく(形態学的には真性の葉は2枚、残りは托葉だから、輪生とはいわない)。葉や茎に小さなフック状のトゲがあって他物に寄りかかって這い上がる。花期6~8月で、径3~5mm、5枚の淡黄色の花冠をもつ小さな花(→花の拡大画像が密集した総状花序をつける。成熟すると径4~6mmの赤〜黒色の果実を結ぶ。根にアリザリン (Alizarin)を含み、古くは有用な染色原料植物であった。本種より調製されたアリザリンは食用色素として用いられてきたが、ラットを用いた実験で腎臓がんが発生したという報告があり、現在では使用が控えられている(→厚生労働省ホームページ参照)。ただし、草木染めに利用する場合、全く問題なく気にする必要はない。和名は在来種のアカネの仲間で、西洋産という意味である(→主な天然色素関連ページ)。『薬物誌』ではERUTHRODANON (“ἐρυθρόδανον”)に相当し(附図)、ERUTHRO (“ἐρυθρό”)は「赤い」という意の古代ギリシア語で、全体として「赤い染料」を意味する。根は利尿作用があり、水、蜂蜜と煎じて飲むと黄疸、坐骨神経痛、麻痺に効果があるという。また根は膣坐薬とすれば、月経血を排出、中絶するともいう。属名はラテン語で「赤」を意味する“ruber”に由来し、種小名は“着色する、染色する”という意味のラテン語で、本種が染色に利用されることを示す。
引用文献:References参照。