中央アジア原産といわれ、エジプトでは5000年以上前に栽培・利用されていたとされる多年草。地下部の肥厚して球形となった鱗茎(bulb)は、強壮・スタミナ増進作用があると信じられ、香辛料として広く利用されるほか、駆虫、健胃、止瀉、解毒、利尿、抗菌などの薬用とされる。ただし、日本ではその強烈な香りと風味が好まれず、とりわけ禅寺では戒壇石に「不許葷酒入山門」と記されているように禁忌とされる。因みに葷とは葷菜すなわち不快な匂いのする野菜の意でほとんどニンニク・ラッキョウ・ニラなどAllium属各種と同義である。漢名は大蒜別名葫と称し、和語の古名は”おほひる”(本草和名・和名抄)すなわち”蒜”(ノビル)の仲間で大きいから。中国では漢代に張騫が西域より伝えたといわれる。日本への渡来は定かではないが、延喜式巻第37「典藥寮」に毎年12月晦日に「供殖藥樣廿五種」の一つに大蒜の名が見えるので、平安中期には知られていたことは間違いない。現在名の”にんにく”は室町中期の山科家来記に見える。成分としてアリインを含む。