【解説】 欧州~中央アジア原産の二年草で、茎は4稜あって細かい軟毛が密生する。葉は対生して長さは下部で約30cm、上部では15cmとなり、表面はしわ状で腺毛で覆われ、縁に粗い鋸歯があって先は鈍頭。花期4~8月、葉腋から対生の花茎を伸ばして2~6個の唇形花を咲かせる。大きな花冠のように見えるのは苞葉で、色は淡紫色〜紫色、または白〜ピンク色までさまざま、その中に薄いピンクの唇形の花冠が鎮座しているように見える(→花の拡大画像)。一般名のclary sageは種小名からつけた名である。種小名は古代ギリシア語の「堅い」の意である“σκληρός” (sklērós)に由来し、ラテン語では“sclarēia”に転じたが、本種のいかなる形質に基づくのかよくわからない。生または乾燥葉、種子油を鎮痙、通経薬とする。通常、花はピンクであるがこの写真のものは白花の品種である。この仲間はヤクヨウサルビア、タンジンなど薬用にされる種が多いことで知られる一方、アキノベニバナサルビアやアメジストセージなどのようにもっぱら観賞用に栽培されるものも多い。同属在来種でもアキノタムラソウ、キバナアキギリなどがある。『薬物誌』のORMINON EMERON(附図)に相当し、煎じてワインとともに飲むと催淫薬となり、蜂蜜にまぶせば目の角膜の白い斑点を取り除のによいとある。ORMINON (“ὅρμινον”)は大プリニウスのhorminonに同じで、ラテン語ではhorminumといい、古くはいわゆるサルビア類はHornium属に分類されたが、Horminum pyrenaicumの1種を除いてすべてアキギリ(Salvia)属に統合された。EMERONの字義はよくわからないが、『薬物誌』にはKUMINON EMERONの用例がある。
引用文献:References参照。