ニコチン酸、ヒスチジン由来のアルカロイド
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1.ニコチン酸由来のアルカロイド

 ニコチン酸は芳香族アミノ酸の一種とされ、二次代謝産物の生合成前駆体となり得るものである。ナス科タバコに含まれるニコチン(Nicotine)はその一つであるが、既にオルニチン由来として挙げた(→こちらを参照)。ここではトウダイグサarecolineトウゴマの種子に含まれるリシニン(Ricinine)の例を挙げる。リシニンは二つの含有窒素原子をニトリル基とアミド基に変換されているので、アルカロイドでありながら塩基性を示さない数少ない例の一つである。その生合成経路は酵素系を用いた研究で次のような経路であることが報告されている。リシニンはニコチン酸(Nicotinic acid)のカルボン酸に相当する部分が失われていないので不完全アルカロイドの一種である。そのほか、ヤシ科ビンロウの果実(ビンロウジ)に含まれるアレコリン(右構造式;Arecoline)もニコチン酸由来の不完全アルカロイドである。構造は簡単ながら、アレコリンにはムスカリン様副交感神経興奮作用があるので、縮瞳薬として眼科で利用される。また、一過性ながら中枢興奮作用があるので、東南アジアや台湾、南中国ではビンロウジ果実を石灰とともにコショウ科キンマPiper betleの葉に包んで咀嚼して一過性の精神高揚を楽しむ習慣がある。

2.ヒスチジン由来のアルカロイド

 西インド諸島原産のミカン科植物Pilocarpus jaborandiの葉にはピロカルピン(Pilocarpine)を始めとするイミダゾール誘導体が含まれる。イミダゾール環の存在からピロカルピンの生合成はヒスチジン(Histidine)に由来すると考えられ、ヒスチジンから生じたオキソ酸にアセトアセチルCoAがアルドール縮合して生合成されると推定される(下図)。しかし、現在のところ生合成に関する実験的な確証は得られていない。イミダゾール環以外に窒素原子はなく、かかる構造的特徴はアミノ酸由来のアルカロイドの中では珍しい存在といえる(→アルカロイドについてを参照)。ピロカルピンはムスカリン様作用があり、大量投与で幻覚を生じる。また副交感神経を興奮させる作用があるので、縮瞳作用を有しアトロピンに拮抗する。