成 分 の 構 造 に よ る 分 類
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1.脂肪酸および類縁体
2.イソプレノイド
基本骨格内にイソプレン(isoprene)の構成単位を有する物質群をいう。天然物化学の黎明期にはイソプレン則と呼ばれていたもので、生合成的にはイソプレノイド経路で生成するものである。生合成の過程で転位反応が起きてイソプレン則が崩れているものも散見される。
<テルペノイド>
C5単位の数により次のように分類される(C5n)
(a) モノテルペン(n=2)
(b) セスキテルペン(n=3)
(c) ジテルペン(n=4)
(d) トリテルペン(n=6)
<イリドイド、セコイリドイド>
基本骨格がC10からなるが、骨格の構造が異なるのでモノテルペンと区別される。この差は生合成過程(こちらを参照)に基づく。5員環の開裂の有無でイリドイドとセコイリドイドに区別され、大半は配糖体として存在する。センブリ、ゲンチアナ、リュウタンはリンドウ科植物を基原とする生薬であるが、強い苦味を呈するセコイリドイドを含み、健胃薬として用いられるこれら生薬の薬効を考える上で重要な成分であるので、苦味配糖体と総称する(→こちらを参照)。
<ステロイド>
トリテルペンの生合成経路から派生してできる(こちらを参照)もので、通例、次の基本骨格をもつ。炭素数はC21~C29でトリテルペンより少ない。動物ではホルモンとして存在するが、植物にも広く分布しファイトステロール(phytosterol)と称して区別する。
<カロテノイド>
C5n x 8 = C40からなるポリエン系化合物で、通常色素として存在する。
3.芳香族化合物
芳香環をもつ天然有機化合物の中には生合成的にシキミ酸由来のC6-C3単位をもつものが多く見られる。ジフェニルプロパノイドやスチルベノイドはフェニルプロパノイドにポリケチドが結合して複合経路で生成する(こちらを参照)。
<フェニルプロパノイド>
(a)クマリン
蛍光性二次代謝物の代表的なものであり、セリ科、ミカン科植物などに多く見られる。
<1,3-ジフェニルプロパノイド>
1,3-ジフェニルプロパノイド骨格を有する化合物群をフラボノイドと称する。そのうち、フラボン(フラボノール)やカルコンは色素として存在する。フラボン(フラボノール)の配糖体には瀉下活性を示すものが多く、例えば生薬エイジツ(バラ科ノイバラの実)の瀉下作用成分マルチフロリンMultiflorinはフラボノール配糖体である。お茶に含まれるポリフェノール成分はカテキンというフラボノイドの一種である。また、花に含まれる色素アントシアニジンもフラボノイドの一種(こちらを参照)であるが、オキソニウムイオンとして存在し性質が著しく異なるので区別している。カテキン、アントシアニジンともに生合成経路は共通である(こちらを参照)。
<1,2-ジフェニルプロパノイド>
イソフラボンを始めとするイソフラボノイドはフラボノイドの生合成経路から派生してできる1,2-ジフェニルプロパノイド骨格を有する一群の二次代謝物で、自然界ではマメ科植物などに局在する。イソフラボンなど一部のイソフラボノイドには骨粗しょう症の予防効果があるといわれ、イソフラボン誘導体をを多く含むダイズからつくられる納豆、豆腐などは欧米で健康食品として認知されている。わが国でもダイズのイソフラボン画分(ダイズィンほか)が同目的で保健機能食品として販売されている。生薬カッコンの基原であるマメ科クズの根にはイソフラボン誘導体が多く含まれ、その1成分ダイゼインには鎮痙作用が報告されカッコンの薬効成分の一つとされている。
<スチルベノイド>
スチルベン誘導体はフラボノイドより炭素数が1個少ないが、生合成的にはフラボノイドと同じシキミ酸由来のC6-C3単位にマロン酸3単位が結合した前駆体に由来している。例として局方外ダイオウ(ショクヨウダイオウなど)に含まれるラポンティシンがあるが、アマチャの甘味成分でイソクマリン骨格をもつフィロズルチンも生合成的には同類(こちらを参照)である。
4.キノンおよび関連化合物
<キノン、ヒドロキノン>
ツツジ科ウワウルシ(クマコケモモ)の葉にはヒドロキノン配糖体としてアルブチンが含まれ、化粧品添加物として用いられている。
<ナフトキノン、アントラキノン>
ナフトキノン、アントラキノン誘導体で水酸基を多くもつものは長波長領域に吸収帯をもち色素として存在するものが多い。ナフトキノンとしてはムラサキ科ムラサキの根(生薬シコン)に含まれるシコニンがあり赤紫色を呈する。アントラキノンとしてアカネ科アカネの根に含まれるアリザリンがある。
<アンスロン>
生薬ダイオウの瀉下作用成分であるセンノシドはアンスロンの二量体である。